バールベックの廃墟とシドンの海の城


 レバノンを訪れたのは、昭和四十一年の平春だった。その頃のベイルートは、世界有数のリゾート都市
 として、美しいシャルマンな町だった。その時一緒に訪れた深田久弥氏もいまは亡い。ベイルートも瓦礫
 と流血の町と化したという。まことに往事茫々として夢の如しである。
 バールベックとシドンを訪れたのもその時のことである。
 バールベックはベイルートの東八十五キロにある口ーマの遺跡である。数多い口ーマの遺跡の中でも、
 ヘリオポリスとよぱれるこの遺跡は、もっとも豪壮かつ華麗である。セム族の神バールを祀ったこの神
 殿には、広壮な大ホール、ジュピター神殿、バッカス神殿、ビーナス神殿などが立ち並んでいた。
 ベイルートの南約五十キロのシドンには、フェニキア時代からの海の城がある。いまの城は十字軍時代
 にできあがったという。地中海の青い海を背景に、海の城はいくつかのロマンを秘めてひっそりと浮かん
 でいた。


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1  ジュピター神殿付属の建物。夏はこの前でギリシア悲劇が行われるという。
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 シドンの海の城。この付近の海岸には十字軍時代以来の海の城の遺跡が多い。陸地とは跳ね橋で連絡している。


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