幻の理想郷ヌリスタン



ヌリスタンはアフガニスタン東部の秘境で、クナール川上流にある。パキスタンのチトラル地方と 
 山一つ隔てた地帯だ。ここには、かつてカーフィル(異教徒)とよばれる独特の言語と宗教をもつ
 人々がいたといわれ、彼らはアレキサンダー軍の子孫だという説もある。
 昭知五十一年九月、私は日本人としては初めてヌリスタンの奥地に入った。
 アフガニスタンやイランはどこへ行っても泥づくりの家が多いが、ヌリスタンの家は木造か木と泥
 を交互に重ねてつくってある。テラスや主室は木材ぱかりでつくり、複雑な彫刻で飾りをつけた家
 が多い。この彫刻はハキスタン側のカラッシュ族のものとよく似ている。言語はインド・アーリア系
 のダルディックに属するといわれるが、谷を一つこえると違う言葉を用いているという。
 パキスタンのカラッシュ族などと比較研究すると面白そうである。
 ヌりスタンの人々とパキスタンの力ラッシュ族とは、もともと同じ文化をもつ民族だといわれるから
 だ。ヌリスタンは理想郷のような美しい峡谷だったが、いまあの人々はどんな暮らしを送っている
 のだろうか。



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1  ヌリスタン最北の村バルゲマタール。村の家は城砦のようにそそり立っている。
2  中央アジアの泥つくりの家と違って、ヌリスタンの家は木造で、柱や梁、扉や窓には複雑な文様が刻まれている。
3  壁は木材と泥を積んてつくられ、一階は家畜小屋か作業場、二階が住居になっている。
4  プリルスタン村の宿舎の主人。独特のヌリスタン帽をかぶり、容貌は印象的だった。
5  クルミをとってきた少女。突然あった異邦人にハッと驚いた表情がいかにも可愛らしい。
6  女性は黒いチャドルをかぶり、朝から晩まで黙々と働く。
7  ヌリスタンの青年。赤い髪と青い目をもっている。


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