釈尊生誕の地ルンビニー


 仏教はインドにはじまり、東アジア各地に広まった。その足跡は大綱では分かっているものの、
 細部にわたってはまだはっきりしない点が少なくない。インド、東南アジアにおける踏査は、い
 わゆる南伝仏教の伝播路を探るためにきわめて重要である。いうまでもなく仏教は、釈尊(しゃ
 くそん)によってガンジス河中流域でまず開花した。この章では、まずインドにおける仏教の成立
 と伝播の跡を探り、ついでパキスタン、スリランカ、ビルマ、タイなどの仏跡を巡礼してみようと思
 う。
 釈尊はカピラバストゥ城の浄飯王(スッドーダナ)の子として、ルンビニーに生まれた。カピラバス
 トゥ城はネパール領内の遺跡のほか、近年、インド領にその遺跡とみられるものが発見され、論
 議されている。インド領から釈尊銘の舎利鉢が出土したためである。
 インドのノーガール駅の北方約三十五キロに、ルンビニー園の遺跡があり、マヤ夫人堂、浴池、
 アショー力王石柱、ストゥーパ址などが残存している。


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1  ルンビニーのアショーカ王宿柱。釈尊がまさしくこ二で生まれたと刻まれている。
2  マヤ夫人はこの池で水浴中、産気を催し、池畔の無憂樹下で右脇出胎したという。
3  マヤ夫人堂内部の釈尊生誕の石像。ヒンドゥー教徒がいろいろな花を捧げている。
4  インド側が発見した新しいカピラバストゥ城の遺跡。
5  城内の一郭にあるこの部分から、釈尊の銘の入った舎利容器が発見された。
南海の仏の道
インド 釈尊生誕の地ルンビニ 釈尊大悟の聖地ブツダガヤ 初転法輪のサルナートとナーランダ
祇園精舎と釈尊入滅の地クシナガラ  均整のサンチーと灼熱のカジュラホ 華麗なアジャンター石窟群
壮大な石の芸術エローラ インド窟院の源流
パキスタン ガンダーラ仏教美術の故郷タキシラ
スリランカ 古代の聖都アヌラーダプラ シギリヤの岩山と古都ポロンナルワ
ビルマ 首都ラングーンを飾る仏塔 山紫水明の古都マンダレー きびしい僧侶の生活
意外に日本と似ているビルマ人の暮らし パガンのバゴダ群
タイ 華やかな「天使たちの都」バンコク アユタヤからタイの東南辺境へ タイの京都、チェンマイ
インドネシア 壮大なる仏跡ボロブドゥル
韓国 日本の原郷、慶州
遥かなる西域 中央アジアから地中海へ