均整のサンチーと灼熱のカジュラホ


 サンチーの塔はデりーの南約七百キロ、ボーパール駅から車で一時間の所にある。ここには大小三つ 
 の塔があるが、第一塔がもっとも有名で、形もよく整っている。塔の周囲には繞道(にょうどう)がつくられ、
 玉垣がまわりを囲み、東西南北にそれぞれ島居状の塔門が、この塔門には、仏伝図や本生図の石彫レ
 リーフがびっしり刻まれている。創建は紀元前三世紀で、その後何回か改修されたが、よく仏塔の基本
 的な形を合日まで伝えている。
 デカン高原北部の片田舎にあるカジュラホは、十〜十三世紀にチャンデッラ朝の都として栄え、ここに
 多くのヒンドゥー教寺院が建立された。カジュラホが世界的に著名なのはここに残る多くの寺院の壁面
 に、官能的な群像が彫られていたためである。恐らくそれは性のエクスタシーの瞬間に宇宙と一体化し
 ようとする、密教哲学的な思想の表現であろう。


1

2

3
1  サンチーの大塔は美しい玉垣で囲まれ、塔門には仏伝図等が刻まれている。
2  カジュラホのミトゥナ像。大らかに真剣に性の営みにふける男女の群像が立ち並んでいる
3  カジュラホのラクシュマナ寺院。基台の四隅に小塔があり、中央にシカラ塔が立つ。

南海の仏の道
インド 釈尊生誕の地ルンビニ 釈尊大悟の聖地ブツダガヤ 初転法輪のサルナートとナーランダ
祇園精舎と釈尊入滅の地クシナガラ  均整のサンチーと灼熱のカジュラホ 華麗なアジャンター石窟群
壮大な石の芸術エローラ インド窟院の源流
パキスタン ガンダーラ仏教美術の故郷タキシラ
スリランカ 古代の聖都アヌラーダプラ シギリヤの岩山と古都ポロンナルワ
ビルマ 首都ラングーンを飾る仏塔 山紫水明の古都マンダレー きびしい僧侶の生活
意外に日本と似ているビルマ人の暮らし パガンのバゴダ群
タイ 華やかな「天使たちの都」バンコク アユタヤからタイの東南辺境へ タイの京都、チェンマイ
インドネシア 壮大なる仏跡ボロブドゥル
韓国 日本の原郷、慶州
遥かなる西域 中央アジアから地中海へ