華麗なアジャンター石窟群


 オーランガバードの北方約百六キロにあるアジャンターには、インドが世界に誇る数々の壁画、
 彫刻をもつ石窟群が立ち並んでいる。展望台から望見すると、馬蹄形に力ーブするワーグラ川
 沿いに、三十の石窟がずらりと並んでいて壮観である。
 とくに、五〜六世紀頃掘られた石窟の仏伝を描いた壁画は華麗である。そのためここは、しばし
 ば五〜六世紀の遺跡と見られがちだが、第九窟(伝、前一世紀)、第十窟(伝、前二世紀)のよう
 に仏塔だけを祀った古い石窟も見られ、インドにおける古い仏塔崇拝の原初形態をよく示してい
 る。
 壁画では第一窟の瞑想する菩薩、黒姫、数々のジャータカ画、第二窟の仏陀の懐妊、仏陀の誕
 生、第十六窟・十七窟の仏伝画などがとくに美しい。やや時代が遅れるが(六世紀以降)、第二十
 六窟の涅槃仏もまことに神々しい尊顔を示している。


1

2
1  展望台から見るアジャンター全景。馬蹄形の構造がはっき り示されている。
2  前一世紀の作といわれる第九窟内部。奥に高さ約三メー トルの仏塔があるが、 装飾は後世に補修されている。
3 窟内で憩うインド人の家族。ヒンドウー教徒のインド人は仏跡にもよく参詣する。

南海の仏の道
インド 釈尊生誕の地ルンビニ 釈尊大悟の聖地ブツダガヤ 初転法輪のサルナートとナーランダ
祇園精舎と釈尊入滅の地クシナガラ  均整のサンチーと灼熱のカジュラホ 華麗なアジャンター石窟群
壮大な石の芸術エローラ インド窟院の源流
パキスタン ガンダーラ仏教美術の故郷タキシラ
スリランカ 古代の聖都アヌラーダプラ シギリヤの岩山と古都ポロンナルワ
ビルマ 首都ラングーンを飾る仏塔 山紫水明の古都マンダレー きびしい僧侶の生活
意外に日本と似ているビルマ人の暮らし パガンのバゴダ群
タイ 華やかな「天使たちの都」バンコク アユタヤからタイの東南辺境へ タイの京都、チェンマイ
インドネシア 壮大なる仏跡ボロブドゥル
韓国 日本の原郷、慶州
遥かなる西域 中央アジアから地中海へ