静謐な微笑たたえる竜門石窟

 竜門石窟は洛陽の南十四キロの所にある。ここの石窟は全部で干三百五十二か所もあるが、このうち大洞
 は二十八か所で、すべて西山にある。その前を流れる伊水は実に美しい川で、対岸から見た奉先寺大仏群
 の姿は、流水に映えてひときわ美しかった。
 ここの石窟は洛陽に遷都した北魏時代にはじまり、賓陽三洞、蓮華洞、魏字洞、唐字洞、古陽洞等の十四
 洞がまず造営された。
 ついで唐代に斉被洞、敬善寺洞、隻洞、万仏洞、奉先寺洞、浄土洞などがつくられた。
 よく晴れた朝、朝日に輝く奉先寺大仏はまことに荘厳で、人々にそれぞれ深い感動を与える。雲南の諸仏が
 眼を見開いているのに対し、竜門の諸仏は瞑想的で静謐な古拙的微笑をたたえている。
 唐代の諸仏はとくに美しいが、人里に近いだけに、見るも無惨に首を打ち砕かれた仏像が多いのが残念だった。


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1  竜門石窟奉先寺洞の神王、力士像。美しい大仏。菩薩に並んで憤怒相の金剛力士はあくまで力強くたくましい。
2  奉先寺洞の露坐の大廬舎那仏。眉は美しい半月形で、まさに眉目秀麗の典型であり、いいしれぬ優しさがある。
3  古都洛陽に近い竜門には、多くの供養者か競って仏龕を造営した。王公路洞の周囲にも多数の仏龕がつくられている。
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 竜門でもっとも古い古陽洞内部。この洞は造像記が多いことで名高く、何人もの美術科の学生が熱心に模写していた。

 
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